Prologue

 太陽は一度死んだ。
 昔―――人がまだ神を慕い、恐れていた頃。

 そして人は繰り返す…罪を、過ちを、哀しい涙を。
 過去の希望と光の在り処、青い故郷の奇蹟の軌跡を……。


 壁が、床が。
 それ自体が自然に光を発しているのかと錯覚するほどに白いその部屋で、長い黒髪が揺れる。

 ゆっくりと、女がひとり歩いて行く。
 まだ若い。美しいが、ひどく冷たい印象の女だ。
 部屋の奥、女が向かう先には棺が置かれている。これもまた、汚れひとつなく白い。
 女の指が、棺に触れた。
「さあ、起きて…」
 ゆったりと微笑み、女がささやく。
「はじめましょう、もう一度」
 彼女が頬を寄せた、その棺の中には男が眠っていた。

 これは遠い過去から遥かな未来へ、終わりなく続き繰り返す、ひとつの神話。


Word

[ 船 ]
荒廃し汚染された地球を捨て、新天地を求めて宇宙に旅立った”箱舟”。
巨大な宇宙船で、中にはホログラムの空の砂浜と”海”がある。
メインコントロールルームなどは閉鎖され、入ることができない。
今は、7人のこどもたちと2人のアンドロイドが生活している。

[ 霧の惑星 ]
”船”が不時着した惑星。
常に有毒の霧に覆われているため、”船”の外には出られない

[ リキッド ]
有毒の霧を体内で中和する飲み薬。
一日に一瓶配布され、飲むことが義務付けられている。
各々に色や成分が違い、他人のリキッドを飲むことは厳禁。
強い副作用があり、飲み続けると身体に重大な障害をきたすことが多い。